雑記:朝日新聞曰く、任天堂はGoogleを脅威と考えていない

朝日新聞は任天堂の古川社長がクラウドゲーミングに対し「脅威ではない」と感じていると報じました。

4月26日に行われた朝日新聞の単独インタビューで、古川社長は先日Googleが発表したクラウドゲーミングプラットフォーム Stadia に対し、「脅威ではなく、新たなビジネスの機会になりうる」と発言。

一方で「ソフトが魅力的じゃなくなれば、テクノロジーの進化とは関係なく売れなくなる」とも述べており、同社は「テクノロジーの進化につれて、ゲーム人口がもっと増えていけばいい」と考えているとのことです。

そして、Apple が発表した定額制ゲームサービスについては、「コンテンツ(内容)しだいだが、サブスクリプション自体はいろんなビジネスで一般的になっている。ゲームでも今後出てくると思うが、いまのところは考えていない」と当面は買い切り型のビジネスを中心に行う方針を示しました。

今波に乗っているNintendo



近年、ゲームの市場規模は世界的にますます増加傾向です。なかでもモバイルゲームが全体の半分ほどを占めるようになり、単体で703億ドルにも上ると考えられています。
モバイルゲーム市場がこれほど成長した理由は複数ありますが、最も成長に貢献した理由はスマートフォンの普及と必需品化でしょう。

プロセスルールが縮小したことで、ローパワーハイパフォーマンスが実現したスマートフォンが普及し、巨大なプラットフォームが形成されたことでモバイルゲームは成長を続けてきました。

そしてGoogleやAppleはそれぞれこの成熟しつつある巨大な市場をビジネスに組み込もうとしていると考えられます。

とはいえ、ゲーマーに受け入れられることが重要であるという認識を持ちつつ両者のアプローチの方法はかなり違います。

GoogleのStadia はクラウドサーバーを活用することで現状のスマホでも実現できない高品質の映像体験を特徴としています。
これにより従来スマホや多くの家庭用PCで遊べなかった重厚長大な大作ゲームが楽しめるところがウリです。

Stadiaの接続図。下り15Mbps必要な点がネック(画像元)

一方でApple のApple Arcade は顧客側の端末にゲームをダウンロードさせるという方法を利用しています。
ゲームが表現できる幅は必然的にiPhone レベルとなりますが、Apple は優れたコンテンツとそのソフト数を重視する考えです。

Googleはプラットフォームを端末に束縛されないことでユーザーの最大化を目指すのに対し、Apple は独占コンテンツの充実で既存プラットフォームと戦おうとしています。

このようにゲーム産業で新たな波が起きようとしている中、任天堂はどのように事業を進めていくのでしょうか。

先日行われた任天堂の決算発表での質疑応答では、次のように発言しています。

Q5. クラウドゲームや5Gなど、外部環境がかなり変わっていく中で、---「ハード・ソフト一体型ビジネス」について、今後どのように考えていくのか。

A5. ---将来的にお客様にゲームをお届けする手段として、クラウドやストリーミングといった技術がますます発展していくと考えています。そのような環境変化に---対応していく必要があると思っています。一方で、---「ハード・ソフト一体型で開発をしているからこそできるユニークな娯楽の体験」というのは、一層価値が高まっていくのではないかと考えています。


ゲームにおいて最も重要なのは娯楽体験です。どんなに見た目がよくてもイライラさせられるならゲームとして失格ですし、どんな優れた人が作ったとしても面白くなければ話になりません。
逆に素晴らしいコンテンツはハードの売り上げを伸ばし、自社の成長を促します。ファミコンにとってのスーパーマリオ、ゲームボーイにとってのポケモンなどがその例です。

そして、忘れてはいけないのは任天堂はこういった娯楽体験を協力しながら作り上げてきたというところです。
任天堂のハードはシャープやNVIDIAなど、多数の下請け工場や製造会社の協力の下で成り立っています。
ソフトも同様で、ゼルダの伝説 BotWで使われたHavokエンジンはMicrosoft 傘下の企業が開発した製品ですし、ニンテンドーアカウントなどのオンラインサービスはDeNA と共同で作り上げていきました。

ファブレスメーカーだった任天堂は他社の協力なしに存在できなかった

任天堂の一時代を築いたとされる岩田元社長はWii発売のころ、「僕らが戦っているのは『お客様の無関心』であってライバルメーカーではない」と語っています。
その意志の表れとして任天堂の目標に「任天堂IPに触れる人口の拡大」が掲げられているのです。
彼らのビジネスはいつまでもお客様本位であり続けようとしているのです。

このような考えを持つ任天堂にとって協力関係にもなりうるApple やGoogle をライバルと認識する理由はありません。

また、社長自身が語っているように、将来クラウドや定額制といったビジネスモデルの変化などに任天堂は対応していく必要があるでしょうが、任天堂には長年培った開発力と製品群があります。

例えば、いつでもどこでも見放題の仕組みを先んじて取り入れたNetflix は、近年良質な独自コンテンツの充実に力を入れております。結局娯楽ビジネスは優れたコンテンツが軸なのです。

ですから、任天堂はGoogleやAppleなどの新規参入組を脅威とらえていないのでしょう。Stadiaが受けたならばそれ、もしくは類似のサービスを活用すればいい。サブスクリプションが受けたとしても買い切りでうまくいっている現状、やるかどうかは別問題で、今やるとしても自社製品だけで十分な品質は確保できる。

本当に問題なのは任天堂が時代の流れ、需要にどれだけこたえられるかではなく、そのうえでどれだけ新しい需要、コンテンツを創出できるか、です。

Wiiの需要を認識していた人はいたか?(Wikipedia)

新規参入組と任天堂を敵対関係でとらえるというのは、恣意的な理論と言わざるを得ないのです。

引用元 https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2019/190427.pdf
https://www.youtube.com/watch?v=TswM5XFSftI
https://newzoo.com/insights/articles/global-games-market-reaches-137-9-billion-in-2018-mobile-games-take-half/
https://digital.asahi.com/articles/ASM4V6DX4M4VPLFA00Q.html?_requesturl=articles%2FASM4V6DX4M4VPLFA00Q.html&rm=325

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